趣味のはなし

映画『ひとりぼっちじゃない』を見ました【ネタバレあり感想】

ふだん映画はあまり見ないタイプの人間ですが(マジで年に1~2本のときもあります)、今年はAmazonプライムビデオを有効に活用しつつ、インプットを増やそうという密かな目標があります。

そんなわけで、先日ふと目にとまった映画『ひとりぼっちじゃない』を見ました。

人とうまくコミュニケーションのとれない、歯科医のススメが恋をしたのは、アロマ店を営む宮子。
しかしながら宮子は、部屋に鍵をかけず、突如連絡が取れなくなったりする、つかみどころがない女性だった。
それでも、彼女と抱き合っていると、ススメは自分を縛っている自意識から解放される気がしていた。
自分でも理解できない自分を宮子は理解してくれている、ススメはそれがうれしかった。
けれど、謎の多い宮子を前に、自分は彼女のことを理解できていない、と思い悩むススメ。
ある日、宮子の友達である蓉子が、ススメに宮子の身に起きた驚きの事実を告げる      

映画「ひとりぼっちじゃない」公式サイトより

監督は、原作となった小説の著者でもある伊藤ちひろさん。

主人公の歯科医ススメをKing Gnuのボーカル井口理さん、ススメが恋する謎多き女性宮子を馬場ふみかさんが演じています。

ちなみに私は原作の小説を読んでおらず、上記のあらすじ以上の情報はまったくないまま映画を見ました。

そのうえ、実は「映画(というか物語)の感想を書く」ということにちょっぴり苦手意識があったりします(笑)

なのでとんちんかんなことを言っている可能性もありますが、とにかく感じたことを言語化する練習も兼ねて、たまには感想を書いてみようと思います。

めめんと

せっかく三宅香帆さんの『「好き」を言語化する技術』も読んだし、感想を書くことからビビって逃げてしまうクセをどうにか克服するぞ…!

ここから先は物語のネタバレを含みます!

感想

正直な感想で言うと、ちょっと難解で、最後まで謎の部分が多い映画でした。

原作を読んでいる方は理解している情報を、原作未読の私は持っていなかったという差もあるかもしれませんが…ネットであらすじを読むまで、宮子がアロマ店をやっているということもよく分からなかったです(笑)

夢なの?現実なの?というちょっとホラーみを感じるシーンがあったり、これどういう状況?というシーンがあったり(道路に横たわっているところとか)、無言電話も結局誰だったんだろう…と、最後までいろんな謎が残りました。

そういう意味では、スッキリする映画ではなかったというのが本音です。

ただ、全体的な印象として、映像美や流れる空気感がとても好みだったので、私個人としては退屈とは感じませんでした。

とにかく作中に登場するロケーションやインテリアがどれもめちゃくちゃセンスよくて、まずはそこから世界観に引き込まれましたね。

ときどき聞こえてくる水が流れるような音や、セミの鳴き声などの自然音が、ASMRみたいに心地よかったです。

俳優さんたちの演技も好きで、気持ち悪さも含め人間味を感じられるススメと、いろんな人に好かれているはずなのにどこか不気味で人間味の感じられない宮子が、それぞれ上手に表現されていたなぁと思いました。

印象的なインテリアや風景に引き込まれる

とくに印象に残った部分が、先ほども触れた、作中に登場するロケーションやインテリアなどが生み出す世界観です(演技のお話じゃなくてすみません…)。

ちょっとした非日常を感じるほどに植物に囲まれ、開け放った窓から光や風が入りこむ宮子の部屋。

一見爽やかなイメージですが、ちょっとエキゾチックなテキスタイルと怪しく光る間接照明で、夜のシーンによっては怪しさや怖さも感じます。
というか、表情に乏しくあまり生気を感じさせない宮子に対し、生命力を感じる植物たちを見ていると、まるで宮子は木々に生気を吸い取られているのでは?とすら思ってしまいました。

ススメが宮子の住むマンションへと行き来する度に通る道は、宮子の部屋のように草木に覆われていて、喧騒から離れてどこかちがう世界へ来たような気分に。

つかみどころのない雰囲気の逢瀬の間には、行きつけの町中華のやけに明るく黄みがかった店内が、今が日常であることを思い出させます。

一方、そんな中華料理屋で再会した蓉子の部屋は、レトロさを感じるドアや窓の造りがお洒落で印象的。
アーティスティックな作品の数々と赤いカーテンから、彼女もまた、宮子とはちがった意味で個性的な人物であることを感じとれます。

そこで蓉子に宮子の秘密をチラつかせられてから、歪だった宮子とススメの関係のバランスがいっそう狂っていくんですよね。

そんな蓉子も最終的には二人のもとを(というか宮子のもとを?)離れてしまい、がらんどうの部屋だけが映し出される。
ススメが蓉子をどう思っていたのか私にはよく分かりませんでしたが、宮子のもとを離れる決心をしたことに、この出来事が関わっているんだろうなとは思いました。

そして母親の家で食卓を囲むシーンでは、黄色や植物の緑などビタミンカラーが映える、温かみのあるお部屋でした。
ススメの選択が前向きであることと、ススメが願っていた「母親の幸せ」が叶いつつあることが、そこからも表現されているように思えました。

個人的にここは、けっこう好きなシーンだったりします。

ススメはひとりぼっちじゃないけど…

映画のタイトルになっている「ひとりぼっちじゃない」という言葉は、宮子との関係の中で、ススメが抱いていた希望なのだろうか。

最初はそう思っていましたが、ラストを見ると、母親としっかりと向き合うことが出来たうえで、宮子のもとを離れていくときのススメの心境にも思えます。

でも、宮子のほうはどうなんでしょう…。

蓉子が去り、ススメが去り、それでも彼女のもとには誰かしらが訪れるだろうし、どうやら身近に兄もいるらしい。
けど、もしかしたら誰とも心の底から繋がれていないのは、宮子なのでは?とも思ってしまいました。

「ひとりぼっちじゃない」って、ススメにとっては「自分はひとりぼっちじゃないと分かったから前に進む」というポジティブな意味であり、宮子にとっては、「私はひとりぼっちじゃない(と思いたいから、いろんな人を受け入れる)」だったのかな…ともちょっと考えてしまいました。

その他、細かいところの感想。

「いつでも鍵が開いていて、誰でも入れる部屋」という概念、ありそうでなかったなぁと(現実では防犯的にヤバいだろうと思ってしまうし、現にススメが忍び込んだりしているわけだが)。
そして、宮子自身がまさにその部屋のような、誰でも受け入れる存在なのかなと思った。
でも、そこに「貢がせてやろう」とか、「人からチヤホヤされたり快楽が欲しい」みたいな悪女的なものは感じられないからこそ、逆に理解しがたく不気味さを感じてしまう。
劇中劇の感想にヒントがあるのかもしれないけど、私には分からず…。

・女優さんにはあまり詳しくないのですが、蓉子を演じる河合優実さんがどストライク過ぎた…!睨みつけるような視線と、ススメに慣れ慣れしく話しかけつつも、ちょっと舌ったらずな喋り方で敬語を使うところに生々しい距離感を感じる(友人の男と二人で喋ってる感じのリアルさというか)。
あと、全体通してファッションやメイクがとにかく似合い過ぎてる!
とくに黄色にちかいオレンジリップがめっちゃ似合っていて可愛かった。

・普通に考えたら、ススメはだいぶ一線を越えた気持ち悪さがある…が、メインキャラたちにそれぞれ別ベクトルの怖さみたいなのがあって、見たあとは不思議とそれが霞んでいる(笑)

・ススメの声が小さすぎて、(大したこと言ってないのに)聞き返されて二度言わされるあの感じ…めっちゃあるあるで自分もウッ…ってなった(笑)

おわりに

そんな感じで、ちょっとよく分からない部分がありつつも、見終わったあとはなんとも言えない不思議な心地よさ(そんなストーリーではないはずだけど、雰囲気的に)を感じられて、見てよかったなと思っています。

私はKing Gnuについてはにわかですが、とりあえず一番好きな曲である「Vinyl」のMVで、映画とは真逆のクズ感高ぇ井口さんを見て心のバランスを保とうと思います(笑)

引き出しが多くて本当に多才な方だ。


今回は、拙い映画感想にお付き合いいただきありがとうございました。

今のところAmazonのプライムビデオで見られますので、ご興味あればぜひ見てみてくださいね(濡れ場やらなんやらあるので、お一人で見られることをオススメしますw)。

それでは、あでぃおす!ᐠ(   ᐢ ᵕ ᐢ )ᐟ

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